紛争鉱物とゲーム機:倫理的調達の現状
紛争鉱物とは金、スズ、タンタル、タングステンなどのことで、コンゴやその周辺地域では、これらの鉱物が武装勢力の資金源となっている。そして紛争鉱物はゲーム産業とも深い関係がある。ゲームコンソールにこれらの鉱物が頻繁に使用されているからだ。
紛争鉱物とは、武力紛争や人権侵害を助長する恐れのある鉱物を指す。 主に金、スズ、タンタル、タングステンなどが含まれ、特にコンゴ民主共和国やその周辺地域では、これらの鉱物が武装勢力の資金源となり、強制労働などの人権侵害が行われている。そして紛争鉱物はゲーム産業とも深い関係がある。ゲームコンソールにこれらの鉱物が頻繁に使用されているからだ。
紛争鉱物に関する規制
日本では、紛争鉱物を直接規制する法律は存在しないが、国際的には規制が強化されつつある。たとえば、アメリカでは2010年に施行されたドッド・フランク法で紛争鉱物の規制が導入され、企業が金、スズ、タンタル、タングステンを使用する際は、その供給ルートを定期的に開示し、武装勢力との関わりがないことを報告することが求められている。では、ゲームコンソールを製造・販売する大手企業(任天堂、SONY、Microsoft)は、紛争鉱物に対してどのようにコンプライアンスを実施しているのだろうか。
任天堂
任天堂は、紛争地域からの鉱物調達を回避する方針を以前から掲げており、2023年にはその供給ルートの法的適合率が100%に達した。同社は、コンゴおよびその周辺国との取引においても、パートナー企業を通じて公正な取引を維持しており、任天堂のサプライチェーンは高く評価されている。
SONY
SONYは、紛争鉱物の供給ルートの適合率が69%とやや低めである。しかし、この数値はSONYが他社に比べ、より詳細な監査を実施している結果でもある。同社は金、スズ、タンタル、タングステンに加え、コバルトの供給ルートについても調査を行っている。2023年度のサステナビリティ報告書によれば、SONYは400社以上のサプライヤーを調査し、そのうち75社に軽微な違反が確認された。具体的には、過剰な残業、外国人労働者のパスポート没収、揮発性化合物を扱う従業員への保護具の提供不備、火災報知器の未設置などが含まれており、SONYはこれを受けてパートナー企業の是正を進めている。
Microsoft
Microsoftは、2023年の紛争鉱物の供給ルートの適合率が87%と、前回調査時の65%から大幅に改善した。同社の報告書では、紛争鉱物の供給ルートに武装勢力が関与していないことが明記されている。
"Microsoft found no reasonable basis for concluding that any 3TG Smelter or Refiner that was identified in the Microsoft Devices supply chain for the 2023 Reporting Year sourced 3TGs in a manner that directly or indirectly financed or benefitted armed groups in a Covered Country."
Microsoftは、2023年度のマイクロソフトデバイスのサプライチェーンにおいて、3TG鉱物が武装集団を直接的または間接的に支援しているという合理的な根拠がないと結論づけた。
サマリー
任天堂、SONY、Microsoftは、紛争鉱物の調達に関して概ね倫理的な取り組みを進めているものの、企業間での対応には差がありようだ。一部の企業では情報開示の不備や適合率の低さなど、問題が残る。世界情勢が不安定である今、紛争鉱物に対するコンプライアンスはさらに重要視されるだろう。