ソニーグループの今期業績見通しは、ゲーム分野の売上高が大幅増の3兆円規模に

PS5は1800万台(前年度比56%増)を販売する見込み。PS Plusは6月のリニューアルで頭打ち解消か。

ソニーグループの今期業績見通しは、ゲーム分野の売上高が大幅増の3兆円規模に

ソニーグループは、5月10日、2022年3月期連結(2021年4月1日~2022年3月31日)の決算を発表した。

2022年3月期の連結業績は、売上高9兆9,215億1,300万円(前年同期比10.3%増)、営業利益1兆1,175億300万円(前年同期比25.9%増)と、いずれも過去最高を更新。営業利益1兆円の大台は、国内製造業においてトヨタ自動車に次ぐ快挙となる。なお、当期純利益は8,884億600万円(前年同期比14.9%減)だった。

▲ソニーグループ 2021年度 決算説明会資料より<クリックで拡大>

増収増益の要因は、ゲームや音楽、映画のエンターテインメント事業の好調が挙げられる。また、一部の事業譲渡に伴う利益や為替の影響なども業績に寄与した。

▲ソニーグループ 2021年度 決算説明会資料より<クリックで拡大>

本稿では、ゲーム&ネットワークサービス分野(G&NS)を中心にまとめていく。

ゲーム分野好調も、PS5の供給問題やPSNの鈍化など

ゲーム分野の連結業績は、売上高が前年度比3%増の2兆7,398億円、営業利益が前年度から44億円増の3,461億円となり、いずれも横ばいに。

アドオン・コンテンツ(追加コンテンツ販売)を含むゲームソフトウェア販売減少があったものの、主に為替の影響やハードウェアの売上増加が寄与。なお、増益の背景は、製造コストを下回る価格を戦略的に設定しているプレイステーション5(PS5)の“損失縮小”によるものだ。

▲ソニーグループ 2021年度 決算説明会資料より<クリックで拡大>

業績は全体を通して横ばい(若干の微増)だが、新ハード発売後(翌年度)の1年とは思えないほど勢いに欠けていた。主な原因は、半導体不足によるPS5の供給が追い付いていないことだ。2021年度(2022年3月期)も十分な台数を確保することは叶わず、“欲しいけど手に入らない”という機会損失に陥っていた。

PS5は2020年11月12日に発売。2020年度は約半年間で780万台を記録した。しかし、2021年度は当初1,480万台を目標としていたが、結果1年間で1150万台にとどまった。

世界累計出荷本数1,200万本を突破した『ELDEN RING』(2022年2月25日発売)など、ソフトラインナップにも恵まれたが、キラータイトルのPS4版のマルチ販売、PS5限定タイトルの不足など、ユーザー間でもPS5に移行する決め手が乏しいようにも思える。

▲ソニーグループ 2021年度 補足資料より<クリックで拡大>
▲上記2021年度 補足資料のPS5販売台数を基にグラフを作成<クリックで拡大>

また、サブスクリプション(サブスク)サービス「PlayStation Plus(PS Plus)」の登録者数も鈍化している。直近(2021年度第4四半期)の登録者数は、前年度から20万人減の4740万人に落ち着いている。月間アクティブユーザー数に至っては、2020年度の第3四半期の1億1400万人をピークに、2021年度ではその数字を超えることはなかった。

サブスクサービスは企業にとって安定的に収益につながる重要な事業だ。(ゲームハードにおける)ライバルの任天堂は、既存のサブスク「Nintendo Switch Online」の追加パックを販売し、登録者数及び客単価の増加を図っている。

▲ソニーグループ 2021年度 補足資料より<クリックで拡大>

PS5は1800万台確保、PSNの改革は間もなく

2022年度(2023年3月期)通期 連結業績⾒通しは、ゲーム分野で大幅な増収を見込むことなどにより、売上⾼11兆4,000億円に。一方営業利益は、映画分野で大幅な減益及びゲーム分野で見込むことなどにより、1兆1,600億円となる。

▲ソニーグループ 2021年度 決算説明会資料より<クリックで拡大>

セグメント別では、ゲーム分野の2022年度 売上⾼⾒通しは、すべてのカテゴリーで増収を⾒込み、前年度⽐34%と⼤幅増の3兆6,600億円とした。なお、営業利益⾒通しは、前年度から411億円減の3,050億円としている。

▲ソニーグループ 2021年度 決算説明会資料より<クリックで拡大>

ゲーム分野の売上高は、大台の3兆円超えとの予想だが、これらは主にPS5の売上増加が見込まれるという。決算説明会では、副社長兼最高財務責任者(CFO)の十時裕樹氏が「現時点で部品の調達目途が立っている1800万台を(2022年度に)販売する見込み」と発言している通り、PS5の供給も改善されることが明らかになっている。

減益に関しては、既存スタジオの開発費を中心としたコスト増、さらにはBungieを含む2022年度に取引の完了を想定している買収などが原因。国内の(SIE)開発スタジオを事実上解体し、海外のAAAタイトルを手掛けるゲーム企業に積極的な投資及び買収を続けるソニーグループ。

2021年度におけるSIEのゲーム開発会社の買収は、2021年9月のFiresprite、10月のBluepoint Games、12月のVALKYRIE ENTERTAINMENT、2022年2月のBungie、3月のHaven Entertainment Studiosと相次ぎ、現在は18ものスタジオを保有している。

ハード(PS5)の価値を上げるためには、充実したソフトラインナップが必要不可欠ではあるが、それでも異様なスピードで買収を仕掛けている。おそらく今後PS5の品薄状態も緩和されることを考えれば、PS5独自のソフトを揃えるには急務の可能性もある。また、同じく大型買収を仕掛けるマイクロソフトの動きも注視しているのだろう。2022年度においても同社の買収劇は話題に事欠かなそうだ。

また、PS Plusのリニューアルを2022年6月に予定している。発表された新プランでは、従来通りのサービスが利用可能な「PlayStation Plus Essential」(価格は現行から変更なし1ヵ月850円~)に加え、ふたつの上位プランが用意されている。

■PlayStation Plus Extra(価格:1ヵ月1,300円(税込)~)
PS4/PS5のタイトル数百本がファースト、サード問わず遊び放題になるプラン。ローンチ時には、『DEATH STRANDING』『ゴッド・オブ・ウォー』『Marvel’s Spider-Man』『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』『Returnal』などのタイトルが提供予定。

■PlayStation Plus Premium(価格:1ヵ月1,550円(税込)~)
上記2プランの内容に加えて、初代PS/PS2/PS3/PSPのタイトルがプレイ可能になる。ローンチ時のタイトルは最大240本。

歴代プレイステーションハードのソフトが遊べる最上位プランは、往年の(コアな)ゲームファンに響く内容だ。価格や内容から考えても「PlayStation Plus Premium」の乗り換えが期待され、頭打ちだった会員数の増加も見込めるだろう。