任天堂 2022年3月期 通期、Switchの販売台数の落ち込みで減収減益
Switchの販売数が前の期を下回ったのは初めて。半導体不足による供給の遅れや経年が原因。鍵を握るのはサブスクの加入数か。
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任天堂の2022年3月期通期(2021年4月1日~2022年3月31日)の決算は、売上高1兆6,953億(前年比3.6%減)、営業利益5,927億円(前年比7.5%減)、経常利益6,708億円(前年比1.2%減)、純利益4,776億円(前年比0.6%減)となった。
好調だった前年の反動で減収減益となったものの、ある程度踏みとどまったかたちだ。
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Switchの販売数が前の期を下回ったのは初めて
減収減益はNintendo Switchの販売数が落ち込んだことによる。前年度のNintendo Switch販売数(Nintendo Switch Liteを含む)は2,880万台だったのに対し、今年度は2,300万台で20%減少した。2017年の発売以来、販売数が前の期を下回ったのは今回が初めて。
販売数が伸び悩んだのは半導体不足による供給の遅れが大きい。加えて、発売からすでに5年が経過しており、ハードとしては頭打ちの状況だ。
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セルスルー(小売業者による販売台数)も前年には及ばなかったものの、実売数を堅調に積み上げ、年間プレイユーザー数は全世界で1億人を突破した。
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ユーザー数の増加と並んでソフト販売が好調だった。『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド / シャイニングパール』(2021年11月19日発売)は1460万本、『Pokémon LEGENDS アルセウス』(2022年1月28日発売)は1260万本を記録。「ポケモン」シリーズがIPとしての強さを発揮した。
直近の『星のカービィ ディスカバリー』(2022年3月25日発売)は初動が良好で、シリーズ30周年にして初めて3Dアクション化されたことが広く受け入れられたようだ。年間のミリオンセラータイトルは39本、販売本数は合計2億3,500万本となり、歴代のプラットフォームで過去最大の本数を記録した。
インフルエンサー施策なども積極的に実施
この大豊作の裏側には積極的なマーケティングがある。
国内では人気Vtuber等のインフルエンサーを起用したプロモーションが目立った。販管費では広告宣伝費が前年比11.1%増、およそ100億円増加している。任天堂が市場で攻勢をかければ、それが呼び水となって他社も広告費の追加投資に動く可能性がある。市場への影響が注目されるところだ。
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今期はデジタル販売も伸びた。ロングセラーの『マリオカート8 デラックス』(2017年)、『あつまれ どうぶつの森』(2020年)が追加DLCを配信。デジタル売上高を押し上げ、前年比4.5%増の3,596億円となった。
また、両タイトルのDLCは、有料サブスクリプションのNintendo Switch Onlineの上位プラン「Nintendo Switch Online + 追加パック」に加入すると追加料金なしでプレイできることから、同プランへの加入を強く動機付けたものと見られる。
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鍵を握るのはサブスクの加入数
次年度の業績予想は、売上高1兆6,000億円(前年比5.6%減)、営業利益5,000億円(前年比15.6%減)、経常利益4,800億円(前年比28.4%減)、純利益3,400億円(前年比28.8%減)の減収減益を見込んでいる。Nintendo Switchの販売台数は2,100万台(前年比8.9%減)、ソフトウェアは2億1,000万本(前年比10.7%減)と、心細い印象だ。
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Nintendo Switchは有機ELモデルが好評だったが、結局のところ部品調達に課題を残したままだ。これまでハード販売に大きく依存してきた任天堂にとって不安が残る。
ただ、同社のビジネスモデルは少しずつだが変化を遂げている。ポイントはNintendo Switch Onlineの加入者数だ。加入者が増えれば安定的な収益源となる上、Nintendo Switchの延命にも繋がる。
次年度の注目タイトルはやはり『Splatoon 3』(2022年9月9日発売予定)だろう。オンライン対戦がメインのため、プレイにはNintendo Switch Onlineへの加入がほぼ必須だ。Nintendo Switch Onlineワールドワイドで1億人いるユーザーに対して、Nintendo Switch Onlineの加入率をどこまで高めることができるか。古川社長の手腕が問われる。